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法定相続人とは

 民法では、その第882条から、相続はいつ、どこで行なわれるか、相続人はどんな権利をもっているかなどについて規定しています。また、第886条から、だれが相続人となるのか、相続人の順序、相続人となることができない者について規定しています。そして、第896条からは、相続される遺産の範囲、法定相続分の割合、遺産分割の方法について規定しています。また、第915条からは、相続の承認と放棄について、第941条からは、遺産と相続人がもとからもっていた本来の財産との分離について、第960条からは、遺言について、第1028条からは遺留分について規定しています。

 「法定相続人」とは、前述の民法で定められている相続人のことをいい、これら以外の者を「相続人」とすることは許されていません。具体的には、故人(被相続人といいます)の配偶者と、その子供、孫、ひ孫、父母、祖父母、兄弟姉妹です。配偶者は常に相続人となりますが、配偶者以外の相続人はその順位によって相続人となります。その第1順位は、故人の子供(子供がすでに亡くなっているときは孫、孫が亡くなっているときはひ孫)、第2順位は、故人の父母(父母がすでに亡くなっているときは祖父母、祖父母がなくなっているときは曽祖父母)、第3順位として、故人の兄弟姉妹(兄弟姉妹がすでに亡くなっているときは甥・姪)となっています。第1順位の方が生存しているときは、第2順位の方は相続人にはなれませんし、第2順位の方が生存しているときは、第3順位の方は相続人とはなれません。つまり、配偶者は常に相続人となる資格を有しますが、故人の子供と故人の父母が同時に相続人となることはできません。なお、養子に関しては、実子と同様に法定相続人となることができます。胎児も相続人となることができます。しかし、事実婚(内縁関係)の配偶者は相続人となることができません。また、事実婚の子供は認知されていれば相続人となることができますが、両親が婚姻している子供の2分の1しか相続分が認められていません。従来の結婚の形にとらわれない(婚姻届を提出しない)夫婦が増えていますが、上記の点は十分に銘記しておくべきでしょう。法律による保護を望むのならば、法律に従って婚姻することが求められます。

法定相続分・指定相続分とは

 遺言による相続分の指定がないときには、法定相続分により相続します。法定相続分は第1順位の子と配偶者の場合には、子が2分の1で、配偶者が2分の1です。第2順位の父母と配偶者の場合には、父母が3分の1で、配偶者が3分の2です。第3順位の兄弟姉妹と配偶者の場合は、兄弟姉妹が4分の1、配偶者が4分の3です。ただし、被相続人は生前に遺言で、法定相続分と異なる定めをすることができます。これを「指定相続分」といいます。また、遺言書の中で第三者にこの指定相続分を定めることを委託することもできます。しかしながら、遺言による相続分の指定があっても、相続人は、相続を放棄したり、相続人全員の合意により相続分の指定と異なる割合で相続財産を分割することができます。

単純承認・限定承認・相続放棄とは

 亡くなったのと同時に、法定相続人は故人の財産を相続しますが、相続人は、相続を無条件にすべて承認するか(単純承認)、相続によって得たプラスの財産の限度においてのみ被相続人の債務および遺贈などマイナスの部分を弁済するという留保付きで承認するか(限定承認)、マイナスの財産が多いことが明らかな場合で、そもそも相続を全面的に拒絶するか(相続放棄)、選択することができます。相続はプラスの資産だけではなく、マイナスの資産(負債)をも承継しますので、総財産がプラスになるのかマイナスになるのか分からない場合に、限定承認をするメリットがありますが、実務上はそれほど多くはありません。ただし、目の前にある動産や不動産だけに気を取られて、実は莫大な借金を抱えていたなどのケースもありますので、相続人全員で十分に考慮することが必要です。そして、限定承認や相続放棄をする場合には、相続の開始があったことを知った時から3か月以内に家庭裁判所へ申述しなければなりません。なお、相続放棄をしたとしても、生命保険金や死亡退職金などは受け取ることができます。

相続欠格・相続排除とは

 「相続欠格」とは、本来ならば法定相続人となる者が、法定の欠格事由によって、相続人となる資格を奪われることをいいます。欠格事由には、①故意に(過失致死、傷害致死を除く)被相続人または相続について先順位もしくは同順位にある者を死亡するに至らせ、または至らせようとしたために、刑に処せられた者(執行猶予を除く)、②被相続人の殺害されたことを知って、これを告発せず、または告訴しなかった者、③詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、または変更することを妨げた者、④詐欺または強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、または変更させた者、⑤相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、または隠匿した者が規定されています。これらの者は、何らの手続きをせずに相続権を失います。

 「相続人の排除」とは、一定の事由があるときに、被相続人の請求または遺言により、遺留分を有する推定相続人の相続権をあらかじめ奪うことをいいます。兄弟姉妹は遺留分を有していないので、推定相続人の排除の問題にならず、遺言書で兄弟姉妹に相続させない旨を記載すれば相続人として排除できます。排除の原因として、①被相続人に対して虐待をしたこと、②被相続人に重大な侮辱を加えたこと、③その他著しい非行をしたことが規定されています。推定相続人の排除をするときは、生前にあらかじめ家庭裁判所へ請求するか、遺言書で排除する意思を表示しなければなりません。

特別受益・寄与分とは

 「特別受益」とは、複数の相続人がいる場合に、被相続人から生前に、遺贈を受け、または婚姻もしくは養子縁組のためもしくは生計の資本として贈与を受けることをいい、贈与を受けた者を特別受益者といいます。例えば、数人の子供の中で一人だけ大学進学や海外留学のためにお金を出してもらったり、家を建てるときや商売をはじめるときに資金を援助してもらったり、結婚の際の挙式の費用や、嫁入り道具、支度金、持参金等を支払ってもらった場合などが特別受益に当てはまります。特別受益として加算されるのは、生前贈与であり、どんなに昔にもらった金品であっても特別受益となります。特別受益を得ている相続人は、他の相続人との公平の観点から特別受益は相続分の前払いと解し、その分だけ法定相続分が相殺されます。正確には、相続開始時の財産価格に特別受益者が受けた贈与の総額を加算した「みなし相続財産」を、相続比率で割って、そこから特別受益者が受けた贈与または遺贈の総額を差し引きます。ただし、相続分を算出した結果、マイナス分があっても、特別受益者はその分を返還する必要はありません。

 「寄与分」とは、複数の相続人がいる場合に、被相続人の事業に関する労務の提供または財産上の給付、被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした者がいるときに、その者の相続分算定において寄与に応じた増加を認める制度をいいます。具体的には、父親の事業を無償で手伝ったり、寝たきりの父母を相続人の一人の支出によって看護したりした場合が考えられます。これに対して、通常の家事や介護などは寄与分として認められません。つまり高齢の父母と同居してその介護をしているというだけでは、法律上、他の相続人より多く遺産相続ができるわけではありません。また、内縁の妻は相続人ではないので、どんなに被相続人のために尽くしたとしても、寄与分は認められません。

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