北海道 旭川 交通事故 行政書士

遺産の評価と相続税節税

 相続税は原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含みます。)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。この場合の財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものをいいます。相続財産には、相続税がかかる財産とかからない財産があります。相続税がかからない財産としては、墓地や墓碑、仏壇や神棚などの祭祀の利用するもの、葬儀の香典や花輪代、国・地方公共団体・公益団体へ寄付した財産などがあります。また、生命保険金は、法定相続人の人数に500万円を乗じた額までは非課税となります。死亡退職金も同様に、法定相続人の人数に500万円を乗じた額までは非課税となります。それ以外の財産に関しては、原則として課税されます。

不動産の評価

 宅地の評価は路線価方式か倍率方式によります。路線価方式は、路線価が定められている地域の土地の評価方法です。路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことで、税務署にある路線価図により算出します。これに対して、住宅地ではない農村部は路線価が設定されていないため、倍率方式により評価します。倍率方式は、固定資産税評価額に、国税庁が地域ごとに定めている倍率を掛けて評価額を算出する方法です。固定資産税評価額は市町村役場に、倍率は税務署に行けば確認できます。

 建物の評価は固定資産税評価額が相続税の評価額となります。相続した宅地等が住宅や事業用として使われている場合には、限度面積までの部分についてその評価額の一定割合を減額する相続税の特例があります。借地権は、土地の価格に借地権割合を乗じて借地権の評価額とします。借家権の評価は、家屋の評価額に借地権割合を乗じて借家権の評価額とします。

生命保険金の評価

 夫が生命保険の被保険者となっており、夫が死亡した場合には、その保険料を夫自身が負担していた場合で法定相続人が受取人となっている場合には、相続人全員に相続税が課せられます。また、夫が保険料を負担し、妻を受取人に指定していた場合には、相続財産ではなく、受取人固有の財産とみなされるため、妻に相続税が課せられます。相続開始時において、保険事故が発生していない生命保険契約に関する権利の価額は、相続開始時において契約を解約するとした場合に支払われることとなる解約返戻金の額によって評価します。なお、解約返戻金とともに剰余金や前納保険料などが支払われることとなる場合には、生命保険契約に関する権利の価額は、解約返戻金と剰余金などの合計額(解約返戻金の額につき源泉徴収されるべき所得税の額に相当する金額がある場合には、その金額を差し引いた金額)により評価することとなります。

株式、公社債、投資信託やその他の評価

 証券市場に情報している株式は、相続開始日の終値、相続開始日を含むその月の終値の月平均額、相続開始日の前月の終値の月平均額、相続開始日の前々月の終値の月平均額のうち、最も低い価格で評価します。上場していない同族会社の株の相続に関しては、その会社の規模によって同業種で公開されている上場企業の平均株価を基礎とする方法や、その会社の資産や負債を計算の基礎にする方法などがあります。公社債のうち、利付債は、発行額に税引き後の既経過利息を加算した額か、相続開始日の市場価格に税引き後の既経過利息を加算した額のいずれか低いほうの額を評価額とします。また、割引債については、発行額に税引き後の既経過の償還差益の額を加算した額か、相続開始日の市場価格のいずれか低い額を選択します。転換社債も原則として、利付債の評価方法により算出します。投資信託は、相続開始日の基準価格で評価します。現金の外貨については、納税義務者の取引金融機関が公表する対顧客直物電信買相場又はこれに準ずる相場により評価します。

相続税の計算

 相続税には基礎控除額があります。基礎控除額は、5,000万円に法定相続人一人当たり1,000万円を加算した額です。つまり、法定相続人が1人だけの場合には6,000万円まで、2人の場合には7,000万円まで、3人の場合には8,000万円までは課税されません。この基礎控除により、実際に相続税が課税される方はそれほど多くはありません。

 相続税の課税価格は、遺産の総額にみなし相続財産と3年以内の生前贈与を加算して、葬儀費用や借金、非課税財産を差し引いたものです。「みなし相続財産」とは、生命保険金、死亡退職金、年金などをいいます。また、「生前贈与」とは、故人が亡くなる前の3年以内に故人が財産を贈与していた場合に課税されるものです。

相続税の算出は、まず、個々の相続人の課税価格を算出した後、相続人全員の課税価格を合算します。そこから、前述の5,000万円+1,000万円×法定相続人の数という基礎控除額を差し引いて、課税財産の総額とします。その後、法定相続分で分割します。なお、基礎控除を算出するにあたって、相続放棄をした方も相続人の人数に加算しますし、相続財産を割り当てられなかった方も法定相続人の人数に含めます。こうして求めた相続税ですが、配偶者や未成年者、障害者には税額控除があります。配偶者の税額の軽減の制度とは、被相続人の配偶者が遺産分割や遺贈により実際にもらった正味の遺産額が、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税はかからないという制度です。相続人が未成年者のときは、未成年者控除が受けられ、相続税の額から一定の金額を差し引くことができます。相続人が70歳未満で障害者のときは、障害者控除が受けられ、相続税の額から一定の金額を差し引くことができます。

相続税の節税対策

 相続税の節税対策としては、「小規模住宅等の課税価格算入額の特例」の利用があります。遺産の中に住宅や事業に使われていた宅地等がある場合には、その宅地等の評価額の一定割合を減額する特例です。この特例を受けられる人は、相続や遺贈によって宅地等を取得した個人です。故人または故人と生計を共にしていた親族の居住または事業に使用されていた建物や宅地は、240㎡を限度として通常の評価額の80%または50%が差し引かれるというものです。また、土地を更地のまま相続するのではなく、建物を建ててから相続すると、相続税を軽減することができます。特にアパートやマンションを建てると、更地のまま相続するよりも半分ほどの評価減になることもあります。この特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に、この特例を受けようとする旨その他所定の事項を記載するとともに、その他一定の書類を添付する必要があります。

 故人が亡くなったときに課税されるのが相続税ですが、あらかじめ、相続財産となるものを生前に贈与しておく方法が生前贈与です。贈与には贈与税が通常課税されますが、贈与税がかからない基礎控除があり、相続人の人数一人当たり年間110万円までは非課税の扱いとなります。それ以上の額を贈与すると、贈与税が課税され、相続税より高くなりますので注意が必要となります。また、毎年、将来に相続人となる人に生前に贈与しておくことを「連年贈与」といいますが、毎年同時期に同額を振り込んでいるだけだと定期贈与とみなされ基礎控除がされない場合もあります。また、単に妻や子供の名義で預金をしているだけでは、贈与にならず、相続時に遺産相続の対象となり相続税が課税されますのでこの点においても注意が必要です。また、「配偶者への居住用不動産の贈与の特例」があり、結婚して20年以上たっている夫婦が、一生に一度だけ利用できる控除の制度が設けられています。

 さらに、「相続時精算課税」という制度を利用することは有効です。この制度は、贈与時に贈与財産に対する贈与税を納め、その贈与者が亡くなった時にその贈与財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額を基に計算した相続税額から、既に納めたその贈与税相当額を控除することにより贈与税・相続税を通じた納税を行うものです。相続時精算課税の適用により、相続を待たずとも生前贈与により贈与税の負担をすることなく、資産を子に渡したいときに渡せるようになることがメリットです。平成15年1月1日以後に財産の贈与を受けた人は、財産の贈与をした方ごとに相続時精算課税制度を選択することができます。贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。相続時精算課税制度を選択できる場合は、贈与をする人が65歳以上の親で、贈与を受ける人が20歳以上の子である推定相続人であることが条件となっています。前述の生前贈与の基礎控除額が毎年110万円までに対して、相続時精算課税制度は、2,500万円の特別控除を受けることができます。また、特別控除額を超えた部分に対しては、一律20%の税率で贈与税が課税されますが、相続時には申告をすることにより、先に納付した贈与税額が全額還付されます。

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